公益社団法人 日本表面真空学会

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会長からのご挨拶

公益社団法人 日本表面真空学会 会長 森川 良忠

物質の表面や界面における化学反応や電子移動などの現象は、現代社会のさまざまな場面で重要な役割を果たしています。例えば、モバイル電子機器に搭載される電子デバイスやバッテリー、各種物質の合成に用いられる不均一触媒、カーボンニュートラル社会の実現に向けて重要な再生可能エネルギーを生み出す太陽電池、自動車や機械の摺動部における摩耗・摩擦、金属の腐食を防ぐ防錆技術、さらには異なる材料を接合する接着技術など、その例を挙げれば枚挙にいとまがありません。

これらの表面・界面現象を基礎から理解するために、表面科学および真空科学は発展してきました。超高真空環境下で原子レベルにまで平坦化された清浄固体表面を作製し、そこへ原子や分子を吸着させ、その際の電子や原子の振る舞いを極めて高い精度で測定することが追求されてきました。このような理想的な表面を対象とした極限的な観測によって、表面真空科学は表面・界面現象に関する量子力学的理解の深化に大きく貢献してきました。

一方、表面真空科学は本来、応用上重要な表面現象を基礎から理解することを目的として発展してきたにもかかわらず、超高真空下の理想表面で得られる知見と、多種多様な分子が吸着して複雑な構造や組成を有する実環境下の表面で生じる現象との間には、しばしば大きな隔たりが存在します。この問題は「プレッシャーギャップ」や「マテリアルズギャップ」として知られ、長年にわたり表面真空科学の重要課題とされてきました。

こうした課題を克服するための研究も継続的に進められてきました。実際のデバイスや触媒が動作している状態の表面をその場観測するオペランド計測技術が発展するとともに、理論面では高精度な電子状態計算と機械学習をはじめとするAI技術を組み合わせたマルチスケール計算手法が急速に進展しています。その結果、これらのギャップは徐々に埋められつつあり、基礎科学の知見と実際の応用を直接結び付ける研究のさらなる発展が大いに期待されています。

このように、基礎科学の深化に大きく貢献し、基礎科学を応用に結びつける、これらの活動をますます活発化することが日本表面真空学会に与えられた重要な使命であると思います。しなしながら、これらの活動をさらに活性化する上で懸念があります。それは、日本の研究力が国際的に低下して来ていることです。これにはさまざまな要因が考えられ、一つの学会の活動だけで解決できる問題ではないかと思いますが、解決の一つの可能性として、当学会では最近国際化に力を入れています。国内では外国人研究者、および、留学生が年々増加して来ていますが、彼らが発表する機会を得るのみならず、日本人の発表に対しても積極的に参加できるように、講演や要旨を英語化することとしました。また、欧米各国との連携は重要ですが、近年経済発展が著しい東南アジア地域との連携も、将来のことを考えると極めて重要であると考えています。
日本表面真空学会が、学術の発展と産業の高度化にますます貢献できるように皆様と共に力を尽くして行きたいと思います。

日本表面真空学会 事務局
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