XPSで水素とヘリウムの分析が出来ないのはなぜですか.

 X線を試料に照射すると光電効果により原子が励起され,内殻に束縛されている電子が放出されます.この電子が光電子です.光電子のピーク強度は,試料中に存在する原子の数だけでなく,それぞれの内殻電子が光によって真空中に放出されるレベルまで励起される確率(これを光イオン化断面積と言います)に依存します.たとえば,Al Kα線で励起したときには h ν =1487eV の光エネルギーが照射されますが,このときのC1s の光イオン化断面積を1.00とすると,H1s は0.0002,He1s は0.0082と非常に小さな値ですので,Al Kα線を照射してもHとHeはほとんど電子を放出しません.このためHとHeのピーク強度は著しく小さく,実際には分析が出来ません.

[1] 吉原一紘: J. Vac. Soc. Japan., 56, 47 (2013).

(ver. 230116)